社員と地域を幸せにする会社
未曾有の大災害を乗り越えようとする人たちの姿にこそ、 これからの時代を生き抜くために、最も大切な「人間としての生き方」がある。 東北地場企業の7名の経営者と 学校の先生へ取材。 「仕事で、人生で、大切なものはこれだったんだ!」と気づく一冊。
著者:福島正伸よりメッセージ
日本列島を襲った東北地方太平洋沖地震によって、多くの尊い命が失われました。
亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈りいたします。
そして今も、避難所や仮設住宅などでの生活を余儀なくされている方々が大勢いらっしゃいます。
一日も早く、平穏、安心な生活ができることを願ってやみません。
今回の想像を絶する大震災は、残された私たちに、生きる意味を、根本から問いかけているように思えてなりません。
本当の人間らしさはここにあるんだ。
私は、被災した沿岸地域を回ってみて、そう確信しました。
希望を持って生きること。思いやりを持って生きること。
まだまだこれからも困難な状況は続き、行政の支援が不十分なこともあるかもしれません。
しかし、自分たちはできることを諦めあきらめずにやっていく。
そんな生き方をしている東北の沿岸地域の人達が、人間として、
最も大切なことは何かを教えてくれている存在だと、気づいたのです。
その瞬間、私の夢が決まりました。
この東北の沿岸地域を、全世界の人達が一生に一度は訪れてみたい
憧れの場所、夢の国にする。
・・・本当にそんなことができるのか?と思われる方もいるかもしれません。
でも、夢に可能性は関係ありません。可能性を創るのは私たち人間です。
すでに今年、来年と東北沿岸地域でその準備や計画が続々と始まっています。
大切なことは、夢やビジョンをもって生きることだと思っています。
今、この国難に見舞われ苦境に立たされている日本を、世界中の人々が見ています。
今回の震災を、日本のみならず、世界中のすべての人々にとって、意味のある出来事に変えていきたい。
ただ単に復興できたということではなく、世界中の多くの人々にとって
「日本のような国を創りたい」と言われる社会創りの出発点にしたい、そう思っています。
これからの時代、人間らしく生きる勇気を最も学び得られるのが、
この東北沿岸地域であり、今回、ご紹介する方々だと思っています。
担当編集者:PHP研究所 佐藤義行よりメッセージ
僕の故郷は岩手県釜石市。
今回の東日本大震災で津波に襲われたところだ。生まれ育った町は壊滅し、実家は冠水して一階には住めなくなった。
故郷を出て20年以上になる。
故郷は好きだが、そこで生涯の仕事を見つけようとは思わず、進学と就職と称して、体よく田舎を出たというのが実際のところだ。
そんなときの大震災。少しでも故郷のためにと思って、福島先生にお願いして創ったのがこの本だ。
誤解に恐れずにあえて言いたい。
僕はこの本を創る過程でものすごく後悔したことが二つある。
一つは、「なぜ、故郷にいなかったのだろうか」
二つ目は、「なぜ、教師にならなかったのだろうか」
ということだ。
「なぜ、故郷にいなかったのだろうか」
福島先生と東北太平洋沿岸地区の経営者を取材して、僕は自分自身がこれまでいかに社会知らずだったかを恥じた。
田舎だと思ってなかばバカにしていた故郷に、こんなに輝いている経営者がいたこと、真剣に地元のために働いている人がいたこと、そしてその地域全体が前向きにものすごい努力をしていることを目の当たりにしたからだ。
「なぜ、教師にならなかったのだろうか」
津波で流された陸前高田市立気仙中学校。そこの鈴木副校長先生は「教師の仕事はまず子どもたちの命を守ること、そしてその命を輝かせるのが教育と気づいた」と笑顔でおっしゃっていた。
本当に涙が出た。福島先生がまぶたをぬぐっているのも見てしまった。
これこそ世界を変える仕事だ。
こんなにすばらしい仕事をしている人がいる。こんなに真剣に思いやりをもって仕事をしている人がいる。夢を語る姿がちっとも不自然じゃない……。
こんな故郷の姿にすっかり惚れてしまった。
人間として大切なこと、仕事をする意味、そして生きる意味、すべての答えがこの被災した地域にはあるのだ。
それを、この本の主役である、真剣に働く人たち、命を懸けて社員と地域を守ろうとする経営者たちが、明確に、そして自然に答えてくれている。
この地域で生きたい、働きたいと心底思った。それだけすばらしい取材だった。
後悔し、自分のおろかさに気づかされた今回の本づくりだったが、最後になってまた気づいた。
「被災地で働いている人、ボランティアで活躍している人はもちろん尊い。しかし、僕たちが、今、いる場所で真剣に働き、生きることもまた、同じように尊いはずだ」と。
確かに被災地は、ものの本質が浮き出ていてわかりやすい。でも、どこにいても真剣に生きること、仕事をする意味は変わらないはずなのだ。
この本を、すべての働く人、これから働こうとする人に読んでほしい。仕事をする意味、夢の大切さ、生きることの尊さがわかるはずだから。
壊滅状態の被災地で、あきらめずに行動している経営者の方々、そしてそのすばらしいお話から、さらにすばらしい本質を引き出していただいた福島先生、本当にありがとうございました。